はじめに:離職は“突然”起こるのではなく、静かに積み重なる 「最近、人が定着しない」「若手がすぐ辞めてしまう」「中堅が疲れ切っている」 こ うした声を聞くことが増えています。
プロセス改善は「ツール導入」から始めてはいけない
はじめに:動かないのは能力不足ではない
現場では「伝えたつもりなのに伝わっていない」「なぜこうなるのか分からない」といったすれ違いが日常的に起きています。
これは決して個々の能力の問題ではなく、組織内で“意味のズレ”が静かに広がっている状態です。
本記事では、現場で起きている“ズレの正体”を構造として分解し、なぜ部下が動かない問題が繰り返されるのかを整理していきます。
DX、業務効率化、標準化。
多くの現場で「プロセスを変えたい」という声が上がると、まず検討されるのがツール導入です。
しかし実際には、
- ツールを入れたものの、結局使われない
- かえって業務が複雑になった
- 属人化が別の形で残ってしまった
といった相談は後を絶ちません。
なぜ、プロセス改善はうまくいかないのでしょうか。
プロセスは「人と組織の前提」が形になったもの

プロセスとは、単なる業務手順ではありません。
それは、「誰が・何を・どこまで判断してよいのか」という人と組織の前提が、そのまま形になったものです。
たとえば、
- 判断権限が曖昧な組織では、承認フローが増えます
- 責任の所在が不明確な現場では、確認作業が重なります
- 対話が少ないチームでは、手戻りが多発します
プロセスの問題に見えているものの多くは、実は「人」や「組織」のあり方が反映された結果だと言えます。
属人化は「悪」ではなく、合理の結果です
「業務が属人化している」という言葉は、ネガティブに使われがちです。
しかし現場をよく見てみると、属人化は多くの場合、
- 誰に聞けば一番早いか
- 誰が判断すると安心か
- 誰なら最後まで責任を持ってくれるか
といった、現場なりの合理の積み重ねによって生まれています。
問題なのは属人化そのものではありません。
- なぜその人に仕事が集中しているのか
- 他の人が関われない前提は何なのか
こうした点が整理されないまま、仕組み化やツール化だけを進めてしまうことにあります。
プロセス改善で最初にやるべきこと
プロセスを見直すとき、最初にやるべきなのは「業務フローを書くこと」でも「ツールを選ぶこと」でもありません。
まず取り組むべきなのは、
- この業務で本当に守りたい目的は何か
- どこまでを現場に委ね、どこを揃えたいのか
- 誰が判断し、誰が責任を持つのか
といった前提の言語化と合意です。
この前提が揃わないままプロセスを整えようとしても、形だけが増え、運用は定着しません。
ツールは「前提が揃った後」に意味を持ちます
ツールは、プロセスを変える魔法の杖ではありません。
- 判断や役割が曖昧なままでは、ツールは使われません
- 対話が不足していれば、ツールは誤解を増やします
- 目的が共有されていなければ、ツールは形骸化します
一方で、
- 前提が揃い
- 判断の構造が整理され
- 現場が納得している
状態で導入されたツールは、プロセスを強力に支える存在になります。
まとめ:プロセス改善は「整理すること」から始まります
プロセスの課題は、
- 人の問題
- 組織の問題
- 業務の問題
が絡み合って表面化します。
だからこそ、いきなり解決策に飛びつくのではなく、
「今、何が起きているのか」
「どこから手をつけるべきか」
を整理することが重要です。
課題がはっきりしていなくても問題ありません。
一緒に整理するところから、プロセス改善は始められます。