公的機関が実施するリスキリング支援プログラムにおいて、プロジェクトマネジメント分野の学習支援に携わりました。
DXが進まない企業に共通する3つの壁 | 経産省DXレポートから読み解く組織課題
はじめに:2025年を迎えた今も、DXが進まない理由
経済産業省の「DXレポート」では、日本企業が抱えるDXの課題が早い段階から示されてきました。
しかし2025年を迎えた今も、多くの企業で次のような声が続いています。
- 仕組みを入れたのに、現場では使われない
- 一部の人だけが走り、組織全体がついてこない
- 部署ごとの事情がぶつかって前に進まない
本稿では、DXが止まってしまう原因を「3つの壁」として整理し、LEAP ARROWSが現場で実践しているアプローチも紹介します。
1. 壁①:変化に前向きな層と慎重な層の“考え方のズレ”

DX推進では、次のような温度差が必ず生まれます。
- 未来の危機感を強く持つ人
- 現状で困っておらず、変える理由が見えない人
これは意欲や能力の差ではなく、「DXとは何のために行うのか」という“意味の理解の差” です。
推進側は未来を見て話しているのに、現場は「今のやり方で問題ない」と考えている。
つまり、DXは最初の段階で
➡ “意味のすり合わせ” ができていないと動き出せない。
2. 壁②:部署ごとの事情がぶつかる構造

DXは、部署をまたいだ見直しを含むため、次のような衝突が起きがちです。
- 「うちの業務には合わない」
- 「他に優先すべきことがある」
- 「負担ばかり増えそう」
これは単なる抵抗ではなく、部署ごとに守りたいもの、抱えている事情が違うから です。
多くの企業では、“説明して納得してもらう” という形で進めようとしますが、
実は必要なのは
➡ 「何を守り、何を変えるか」を一緒に話し合う場を設けること。
少しずつ試し、話し合いながら進める進め方が効果を発揮します。
3. 壁③:不安・恐れ・現状維持の心理

現場でよく聞かれる声は、次のようなものです。
- 自分の仕事がなくなるのでは
- 新しい仕組みに自信がない
- 失敗したくない
- 今のやり方に慣れていて変えにくい
これは自然な反応です。
経産省DXレポートが指摘しているように、“人の価値観や習慣に関わる変化” は、仕組みだけでは進みません。
DXの最大の壁は、
➡ 現場の心理と向き合わずに改革を進めようとすること にあります。
4. DXは「意味をそろえること」から始まる
私たちがDX支援の現場で重視しているのは次の3つです。
-
① DXの目的を“言葉で揃える”ための対話の設計
(Whyを言語化する・役割や期待値を揃える) -
② 現状(As-Is)と目指す姿(To-Be)を整理する
(職種・部署ごとの“見ている景色”を合わせる) -
③ 小さな範囲で試し、合意を積み重ねる進め方
いきなり大きな改革に踏み込むよりも、
- 小規模な単位で試す
- 結果を振り返る
- 次の一歩を決める
という積み重ねのほうが、抵抗が少なく進みます。
これは 「理解」ではなく「納得」 を増やすための方法です。
(3)部署をまたいだ対話をつくる
DXを進めるほど、不安や恐れが表に出てきます。
これを抑え込むのではなく、
- 何に不安があるのか
- 各部署にどんな事情があるのか
- どこまで変え、どこは守るのか
こうした対話を設計することで、組織全体の足並みがそろいます。
これらの対話や整理を進めるために、状況に応じてワークショップ手法(LEGO® SERIOUS PLAY® など)を使うこともあります。
ただし重要なのはツールではなく、組織で「意味をそろえる場」をどう作るか です。
5. 明日から始められる「最初の3つの取り組み」
■ ① DXの目的を30分で話し合う
問いはこれだけで十分です。
「DXとは、私たちにとって何を変える取り組みか?」
■ ② 現場の“いまの仕事の物語”を書き出す
成功していること、困っていること、理想の姿を共有するだけで、
DXが“身近な話”になります。
■ ③ まず1部署で小さな改善を試す
全社で一気に進めるのではなく、小規模から始めるほうが成功しやすい。
6. 自力で進まないと感じたら
それは「“組織の変わり方”に関わる課題」
話し合い・意味合わせ・部署横断の調整は、内部だけでは限界が来ることがあります。
LEAP ARROWSでは
- DXの意味合わせワークショップ
- 部署横断の対話づくり
- 小さく試して進める進め方の伴走
- 組織開発・チームづくり
- プロジェクトの進め方支援
などのテーマで支援しています。
DXの成功は、技術よりも「組織が変わる力」に左右されます。