離職が続く職場に共通する“3つの見えない摩擦”|組織開発の視点で読み解く
はじめに:離職は“突然”起こるのではなく、静かに積み重なる
「最近、人が定着しない」「若手がすぐ辞めてしまう」「中堅が疲れ切っている」こうした声を聞くことが増えています。ただ、離職の理由は決して給与・待遇だけで説明できるものではありません。
現場に向き合い続けて見えてくるのは、
“言葉にならない摩擦” が静かに積み重なり、限界値を超えた時に離職という形で表に出るということです。
そこで本稿では、離職を引き起こす「3つの見えない摩擦」を整理し、組織開発の実践から、どう向き合えばよいのかを紹介します。
1. 摩擦①:意味のズレ|仕事の目的がそろっていない
離職理由として最も多いのが、「何のためにこの仕事をしているのか分からない」という声です。
- 方向性が突然変わる
- 上司と言っていることが噛み合わない
- 部署ごとに“成功”の定義が違う
- チームの優先順位が見えない
これらはすべて、仕事の“意味”がそろっていない状態 です。
推進側(管理職)と現場で「見ている未来」が異なると、日常のすべての仕事が“ズレ”として蓄積されます。
※離職の背景には「推進側だけが前のめりなズレ」と「現場だけが前のめりなズレ」という2つの型があります。
自社がどちらに当てはまるかを整理することが、改善の第一歩になります。


この温度差が放置されると、「頑張っても報われない職場」という印象が生まれ、やがて離職の引き金になります。
2. 摩擦②:期待のズレ| 役割・責任が曖昧なまま進む

次に多いのが “期待のズレ” です。
- あれもこれも任される
- 何が成果なのか分からない
- 上司と部下で「できている」の認識が違う
- 増え続ける仕事に対して線引きがない
これらは、役割・責任・期待の境界が曖昧な組織で起きる摩擦 です。
本来は「任せる量」ではなく、“どの状態になればOKなのか” が言語化されていないことが問題の根本です。
役割の曖昧さは、じわじわと心理的な負荷と無力感 を積み重ねます。
その結果、
「やってもやっても終わらない」
「自分は必要とされていないのでは」
といった感情が蓄積され、離職につながりやすくなります。
3. 摩擦③:関係のズレ | 対話が起きない組織は人が辞める
離職の現場に深く踏み込むと、最も強い予兆となるのが “関係のズレ” です。
- 相談しづらい
- 会議で本音が言えない
- 指摘すると角が立つ
- 情報が途中で止まる
- 部署間で互いに遠慮がある
これらは一見小さな問題に見えますが、実際には 離職の最も強い要因 です。

関係性が弱い組織では、
- 不安が語れない
- 誤解が放置される
- 批判を恐れてチャレンジできない
結果として、「自分らしく働けない職場」 という印象が強まり、離職につながります。
4. 見えない摩擦に向き合うための LEAP ARROWS のアプローチ
私たちが離職・定着率向上の支援で重視しているのは、次の3つのステップです。
※もし自社でも「なんとなく噛み合わない感覚」がある場合は、短い雑談レベルからでもご相談ください。
状況整理のお手伝いもしています。
① 仕事の“意味”をそろえる対話をつくる(Why の共有)
- どこに向かっているのか
- なぜ変える必要があるのか
- 何を守り、何を変えるのか
これらを上司・部下・部署横断で共有することで、摩擦①の“意味のズレ”が解消されます。
② 現状(As-Is)と目指す姿(To-Be)を見える形にする
- お互いが見ている景色をすり合わせる
- 職種ごとの期待や役割を整理する
- 認識のズレを立体的に把握する
LEGO® SERIOUS PLAY®メソッドなどの手法を使うこともありますが、
重要なのは 「言葉になっていなかった感覚」を取り出すこと です。
③ 小さく試し、合意形成を積み重ねる進め方
離職防止は大規模改革よりも、小さな合意と成功体験の積み重ねで進めるほうがうまくいきます。
- 小さい改善案
- 試す
- 振り返る
- 次の一歩を決める
この循環が、摩擦②・③の解消に強く効いてきます。
5. 明日から始められる「最初の3つの取り組み」
① 仕事の意味を30分だけ話し合う
問いはこれだけで十分
「この仕事は、私たちにとって何を実現する取り組みか?」
② “期待のズレメモ” をつくる
- お互いが期待していること
- 現状とのギャップ
- どこから修正すべきか
③ チームで1つだけ改善を試す
小さな一歩で良い。重要なのは 意思決定の合意 と 観察。
6. 自力では進みにくいと感じたら
離職が続くとき、それは“個人の問題ではなく、組織の変わり方に関わる課題” のサインです。
LEAP ARROWS では、
- 意味合わせワークショップ
- 役割・期待の可視化
- チームの対話づくり
- プロジェクト進行の伴走
- 組織開発全般の支援
などを通じて、組織の変化をサポートしています。